珈琲プリンスと苦い恋の始まり
別れは突然に
「ただいま…」とドアを開けると、キッチンから「おかえり」と声が戻る。
それを耳に入れないようにドアを閉め、スニーカーを脱いで玄関へと上がった。
廊下を進むとキッチンから母の声がして__
「愛花、ケーキは持って帰った?」
顔も見せずに聞くもんだから、ピクッと眉を引き上げながらキッチンに向いて声を返した。
「持って帰ったよ、ほら」
開かれたドアの向こう側に箱を見せる。
母と一緒にいた人はこちらを振り向き、「まなちゃんお帰り」と声をかけてきた。
ぎくっと一瞬心臓が鳴り、「ただいま」と平気そうな顔を装う。
「待ってたよ」と話す相手を見遣りながら、(待たなくてもいい)と考え、言葉上では「ごめんね」と謝った。
「昇平(しょうへい)さんの誕生日だから今日は奮発したわよ」
母は焼きたてのステーキ肉を乗せた皿をテーブルに置き、私にも「早く座りなさい」と急き立てる。
こっちはとてもステーキなんて食べれる気分じゃないけど、喜んでる母を見ると「要らない」とは言えず、無言でケーキの箱をテーブルに置き、私を「まなちゃん」と呼ぶ人の斜め向かいに座った。
それを耳に入れないようにドアを閉め、スニーカーを脱いで玄関へと上がった。
廊下を進むとキッチンから母の声がして__
「愛花、ケーキは持って帰った?」
顔も見せずに聞くもんだから、ピクッと眉を引き上げながらキッチンに向いて声を返した。
「持って帰ったよ、ほら」
開かれたドアの向こう側に箱を見せる。
母と一緒にいた人はこちらを振り向き、「まなちゃんお帰り」と声をかけてきた。
ぎくっと一瞬心臓が鳴り、「ただいま」と平気そうな顔を装う。
「待ってたよ」と話す相手を見遣りながら、(待たなくてもいい)と考え、言葉上では「ごめんね」と謝った。
「昇平(しょうへい)さんの誕生日だから今日は奮発したわよ」
母は焼きたてのステーキ肉を乗せた皿をテーブルに置き、私にも「早く座りなさい」と急き立てる。
こっちはとてもステーキなんて食べれる気分じゃないけど、喜んでる母を見ると「要らない」とは言えず、無言でケーキの箱をテーブルに置き、私を「まなちゃん」と呼ぶ人の斜め向かいに座った。