珈琲プリンスと苦い恋の始まり
一人だけしんみりとした気分で黙々と食事する。
母や戸籍上の父と会話をしないのは、いつものことだ。
それを二人から責められたことは一度もない。
二人にとっては、私がこの家に帰ってくることだけで満足なんだ。
「ご馳走さま」
手を合わせて挨拶をすると、ちらっと母が横を向く。
今日はちゃんと食べてると確認したみたいで、「お粗末さま」と返事があった。
「お皿は片付けなくていいわよ。お母さんが洗うから。それよりもケーキ食べようか、今お腹に入る?」
気遣うような訊き方をされる。
私は開けられてもないケーキの箱を見つめ、「今はいい」と断った。
「私、ケーキが嫌いだから二人でどうぞ」
ご勝手に…という雰囲気で席を離れる。
母は呆れたように「愛花」と声をかけたが、昇平さんがその声を止めた。
「まなちゃん、ケーキありがとう」
お礼を言う相手を振り返り、お愛想の様な笑みを見せた。
「いいえ。いつもお世話になってるのは私の方なんで」
他人行儀に言うとキッチンを出た。
そのままトイレに直行して、食べたばかりのステーキ肉を吐き出してしまいたい心境だけど。
母や戸籍上の父と会話をしないのは、いつものことだ。
それを二人から責められたことは一度もない。
二人にとっては、私がこの家に帰ってくることだけで満足なんだ。
「ご馳走さま」
手を合わせて挨拶をすると、ちらっと母が横を向く。
今日はちゃんと食べてると確認したみたいで、「お粗末さま」と返事があった。
「お皿は片付けなくていいわよ。お母さんが洗うから。それよりもケーキ食べようか、今お腹に入る?」
気遣うような訊き方をされる。
私は開けられてもないケーキの箱を見つめ、「今はいい」と断った。
「私、ケーキが嫌いだから二人でどうぞ」
ご勝手に…という雰囲気で席を離れる。
母は呆れたように「愛花」と声をかけたが、昇平さんがその声を止めた。
「まなちゃん、ケーキありがとう」
お礼を言う相手を振り返り、お愛想の様な笑みを見せた。
「いいえ。いつもお世話になってるのは私の方なんで」
他人行儀に言うとキッチンを出た。
そのままトイレに直行して、食べたばかりのステーキ肉を吐き出してしまいたい心境だけど。