珈琲プリンスと苦い恋の始まり
父と祖母の急死を二度も目の当たりにした私は、誰よりも心的ストレスが大きいと診断され、暫くの間、入院をするように勧められ、一ヶ月以上、海の側に建つ病院で過ごした。

そこでは毎日のようにカウンセリングを受け、今の自分の気持ちを何でもいいから話して、と言われた。


先生は我慢強く私の話を聞き出してくれて、時には泣いて、そしてまた話してね…と繰り返す。

同じ話でもいいから…と言われ続け、心は少しずつだけど回復していった。

__________________


ポタタ…と音がして、無意識に泣いてたんだと気がつく。
手にしたカメラの上に水滴が見えてる。

「大変!」と焦ってティシュペーパーで拭き取り、その後で涙がもう落ちてこないように…と目を擦った。


今でも時々、こんな風に知らず知らずのうちに涙が溢れてくる。
表面上は治ったように見えてる心の傷も、実際はまだ癒えてないのかもしれない。


新しく引き抜いたティッシュで鼻水をかみ、スン…と鼻を鳴らす。

もう子供じゃないんだから…と自分に言い聞かせ、泣かない…と思いながら息を吸う。


< 118 / 279 >

この作品をシェア

pagetop