珈琲プリンスと苦い恋の始まり
何度か深呼吸を繰り返す。
これもストレスを緩和する方法の一つとして、入院中に医師から勧められた。


カメラを手離し、父のフレームの横に置いた。
このカメラは二代目で、初代のカメラは父が持っていたものを貰ったんだ。


デジカメじゃなく、自分でピントを合わせるタイプのカメラだった。
なかなか思うようにピントが合わせ難くくて、レンズも場所や物によっては替えなくてはいけないから大変だった。


撮影の時にいつも着てるカメラマンベストも父の形見。
キャップは流石に自分のだけど、その格好はカメラを持って出掛けてた父と同じだ。


私はそれくらいお父さん子だった。
母がいなければ、自分が父のお嫁さんになりたい、と言ってたくらいだった。


その父のカメラで最初に撮ったのが、あの菩提寺の枝垂れ桜。

あれは上手にピントが合った写真で、撮ったのも自分が高校に入学してからだったと思う。


お墓参りの為に菩提寺へ行き、そこで咲き乱れる桜があまりにも美しいからカメラに収めた。


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