珈琲プリンスと苦い恋の始まり
「いらっしゃいませ」


『モリモト不動産』のドアを押し開けると、直ぐにカウンターの椅子に掛けていた男性が立ち上がった。


「午前中にお電話を差し上げた白川武斗と申しますが」


名乗ると「ああ、お待ちしておりました」と微笑みが返り、「どうぞ掛けて下さい」と椅子を勧められた。


俺は言われるままにカウンター前にある椅子に腰掛け、相手が座り直してから話し出すのを待った。


「白川珈琲店様にご購入頂いた物件について、伺いたいことがあると電話を受けた者から聞いておりますが」


椅子に座り直した相手は自分の名刺を差し出しながら言い、こちらの物件でお間違いないでしょうか?と写真のコピーも見せてきた。


「ええ、そうです。実は、この家に以前住んでいた方の情報が知りたくて」


俺は白黒の写真を見ながらそう言った。
その写真には庭の様子は写されてない。


「前に住んでいた方の情報ですか?」


森本誠司(もりもと せいじ)という男性は、名刺によると『モリモト不動産』の社長らしい。


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