珈琲プリンスと苦い恋の始まり
「そうです。小川の『川』に並列の『並』と書いて『川並』です」


メモに漢字を書き写しながら説明をされ、それを見つめて、彼女とは違う…と思った。


「ご主人様も先に亡くされて、お子さんもいらしたみたいなんですが、先立たれてますね。
ハル様ご自身にはご兄弟もおられないみたいですし、それで他に身寄りもないからというので、買取を希望されていると記されています」


「その話をこちらに持ち込まれたのは誰ですか?」

 
身を乗り出すように訊ねると、社長はペラリと紙を捲った。


「これによると、お話を持ってきたのは、川並様の亡くなった息子さんの元妻、となっています」


続柄がそうなのか、俺はその方の名前を教えて貰えないだろうか…と訊いてみた。


「申し訳ございませんが、当方もプライバシーに関する情報は答えることが出来ません」


その方はまだご存命ですから…と付け加えられ、流石に引き下がるしかないのか…と諦めかけたが。


「あの…でしたら、その方に娘さんがいるかどうかは分かりませんか?」


彼女に辿り着きたいと願ったが。


「生憎、そこまでの情報は分かりませんね」


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