珈琲プリンスと苦い恋の始まり
出張喫茶店
珈琲の出前を打診されてから二週間後、俺は隣町にあるデイケアサービスセンター『悠々』の中にいた。
常連客の山本さんがセンター長に話を通し、俺は此処に招かれたのだ。
大谷広嗣(おおたに ひろつぐ)さんと名乗るセンター長は、俺を気持ちよく迎え入れ、面談室に通すと直ぐに「本題に入りましょう」と促し、珈琲の出前ではなく、喫茶店の出張を出来ないだろうかと訊いてきた。
「月二回でいいんです。開設時間も午後の二時間程度で構いません」
その時間が一番の稼ぎ時でしょうが…と知った上で、それでも何とか…と食い下がる。
「私はセンター長として、此処に来るお年寄り達に美味しい珈琲を飲んで頂きたいんです」
見たところ自分の父親と大差ない年齢の彼は、長いこと町役場の福祉課で働いていたんだと語った。
「縁あってこの職場に再就職させて頂き、通ってくるお年寄り達の顔を見ながらいつも思うようになったんですよ。
いずれは自分もあの人達の仲間入りをするんだろうな…と。
家庭では邪魔者扱いされて、行く宛もなく此処に通うようになるんだろうな、ってね」
常連客の山本さんがセンター長に話を通し、俺は此処に招かれたのだ。
大谷広嗣(おおたに ひろつぐ)さんと名乗るセンター長は、俺を気持ちよく迎え入れ、面談室に通すと直ぐに「本題に入りましょう」と促し、珈琲の出前ではなく、喫茶店の出張を出来ないだろうかと訊いてきた。
「月二回でいいんです。開設時間も午後の二時間程度で構いません」
その時間が一番の稼ぎ時でしょうが…と知った上で、それでも何とか…と食い下がる。
「私はセンター長として、此処に来るお年寄り達に美味しい珈琲を飲んで頂きたいんです」
見たところ自分の父親と大差ない年齢の彼は、長いこと町役場の福祉課で働いていたんだと語った。
「縁あってこの職場に再就職させて頂き、通ってくるお年寄り達の顔を見ながらいつも思うようになったんですよ。
いずれは自分もあの人達の仲間入りをするんだろうな…と。
家庭では邪魔者扱いされて、行く宛もなく此処に通うようになるんだろうな、ってね」