珈琲プリンスと苦い恋の始まり
「…あの野郎め」


思わず呟く俺を見返し、社長は不思議そうに首を傾げる。
その表情を目に入れて「いいえ、何でもありません」と誤魔化した。


「どうもすみません。お手間を取らせてしまって」


椅子を後ろに引きながら謝り、有難うございました…と頭を下げた。

社長は「いえいえ」と愛想よく笑い返し、「また何かありましたらいつでもご相談に応じます」と言った。


ドアを引いて外に出ると、大きな息を吐き出す。
結局のところ、あの庭にあった桜は処分されていて、それを依頼したのは俺の親父……。



「それなら俺が処分したも同じ様なもんじゃないか」


関わってはないが似た様な感じだ。俺も白川珈琲店の関係者なんだから。


「あーなんか、彼女に嫌われる理由が分かったと言うか…。彼女と家との関係は謎なままだけど、あの思い入れの強さなら、切られてしまったことに対して相当怒りが強いんだよな」


俺は何も知らなかったんだがな…と呟きつつ車に乗る。
もしも、このまま彼女に会えば、何だかバツが悪い話だなと考えた。


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