珈琲プリンスと苦い恋の始まり
「マスター、この店やっぱり何か食べ物を置いた方がいいよ」


相変わらずコンビニのスイーツを持ち込んでいる山本さんは、その方が田舎ウケがいい…と喋った。


「此処は都会のように珈琲だけを味わいに来る客は少ないんだからさ」


そう言いながら自分はコンビニのミニパフェを食べ始め、「甘過ぎるところが今一つだね」と評価している。


（……結局、この人は何に対しても辛口なんだよな）


そう思いながらオーダーされた珈琲を淹れ、目の前に差し出した。



「山本さんは今日はお休みなんですか？」


悠々で調理員をしている人に訊いてみると、「そうよ」とアッサリ答えが返る。


「私はパートだからね。週四日で働いてるんだよ」


旦那の扶養を超えない程度でね…と笑い、殆どの調理員がそうだと言った。


「そうなんですか」


器具を洗いだしながら納得すると、珈琲を一口飲んだ山本さんが話しだした。


「そう言えば、今日は愛花ちゃんも午前中は休みだと聞いたよ。身内の月命日だからお墓参りに行くと言ってたよ」


若いのに関心だろ…と話す声を聞き、ハッとして顔を上げた。


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