珈琲プリンスと苦い恋の始まり

「身内！？」


「そうだよ。確か、お祖父さんとか言ってた様な気がするけどね」


隣町にある菩提寺にお参りすると言っていたらしい。

俺は、へぇ…と感心して、信心深いんですね…と呟いた。


「あの子は本当に感心な子なんだよ。お祖父さんだけじゃなくて、お祖母さんや父親の月命日にもお参りを欠かさないからね」


「ええっ！？父親！？」


「そうだよ。愛花ちゃんのお父さんは大分前に亡くなってんの」


ズズズ…と珈琲を吸う山本さんに、俺の衝撃的な心情が分かる訳もないと思うが。


「…でも、あの、この間此処で珈琲を飲んでた時に自宅から電話がかかりましたよ。お母さんからみたいで、『お父さんの誕生日だから早く帰るように』って言われてました」


「ああ、それは愛花ちゃんの継父のことだよ。お父さんが亡くなった後、お母さんが再婚したと聞いてるよ」


「えっ！？誰からですか！？」


「そりゃ勿論愛花ちゃんからに決まってるだろ」


呆れたように話す山本さんは、「それがどうかしたのかい？」と訊ね返してきた。