珈琲プリンスと苦い恋の始まり
「自治会に入ってないと『これだから都会の者は』とか言われるんだよ。何かあっても関わっても貰えないし、地区の行事とかあっても誘って貰えないよ」


此処に住んで店を構えてるんなら入っていた方がいいと諭し、俺はそんなことよりも、今は彼女のことがもっと知りたいと思った。



「あの、山本さん！」


前屈みになって身を乗り出す。
俺が真剣な表情をしてるからなのか、彼女の顔がポッと赤面した。


「何だい」


手にカップを持ったまま訊き返された。


「彼女のことについて、もっと詳しいことを教えて下さい！何でもいいんです。知ってることなら全部！」


手を握り締めて願うと、彼女はキョトンとした。

どうして俺がそれを聞きたがるのかという顔つきでいて、目をパチパチと瞬かせている。


「…実は、この間不動産屋さんで初めて聞いたんです。この家に川並さんと仰る方が住んでいて、病気で急に亡くなられたと。
それで、その方の息子さんのお嫁さんだった方が、家と土地を買取に出されたと知って……」


しかし、それが誰なのかは教えて貰えなかった。
彼女に関係のある人かどうかも分からないままでいた。


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