珈琲プリンスと苦い恋の始まり
自分も毎年見惚れていた…と話し、あれが無くなった時はガッカリしたねぇ…と囁く。

俺はそれを聞いて申し訳なくなり、「そうですか…」と悄気ながら声を出した。


「そう言えば、マスターは知ってるかい?愛花ちゃんの名付けの理由を」


振り返った山本さんがいきなりそう訊いた。
俺が、知ってますよ…と答えると、詰まらなさそうに「おや、そうかい」と言葉を返した。


「それじゃ愛花ちゃんの気持ちも分かるだろ。自分の代名詞みたいな桜が無くなって、凄くガッカリしてるんだよ」


気落ちし過ぎて、この店にもなかなか足を運ばなかったみたいだしね、と言うものだから、俺は驚いて「ええっ!?」と声を張り上げた。



「それ、どういう意味ですか?!」


「おや、今名付けの理由を知ってると言ったじゃないの」


呆れた風に言われ、そりゃ知ってますけど…と反論した。


「でも、俺が聞いたのは、彼女が桜の花ように皆に愛される人になって欲しいという意味で付けられたってことですよ!?」


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