珈琲プリンスと苦い恋の始まり
「マスターは、愛花ちゃんがどうしてカメラで人を撮らないのかも知らないんだろう？

あの子はいつも、自分が死と隣り合わせで生きてると思ってるんだよ。

お父さん、お祖母さん…と自分が連続して突然死してるところを発見したから。

……だから、今という時があっても、その一瞬先は分からないと考えて生活してると思うんだよ」


人と深く触れ合いたくないから写真も撮らない。
正面から写真を撮らないのも、見送ってばかりだからじゃないのかねぇ…と囁いた。


「だけど、今回の桜の件はまずかったよ。
人の命はいずれ尽き果てるけど、あの子にとっては、ここの桜は永遠に咲き続けるものとして、考えてただろうからね」


嫌われたね、と意地悪く言う山本さんの声に、俺は（本当にそうだ）と思う以外の言葉が見つからず＿＿。



「ああ……」


落胆の声を出して、その場に座り込みそうになった。
身体中から力が抜けていくのが分かって、それで全てが納得がいった。



「親父ぃ…」


なんてことをしてくれたんだよ。


ガックリと項垂れる俺を、カウンター越しから眺めていた山本さんは……


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