珈琲プリンスと苦い恋の始まり
柔らかい笑みを浮かべると、「今日は休み?」と訊かれた。


「はい…いえ、時間給を頂いて来ました」


そう答えると、「そうか…」と残念そうに囁く。


「もうそろそろ帰らないといけない時間です」


スマホで時間を確認して言うと、真壁さんは私のことを見て__。


「次の命日の日も来るんでしょう?次は確か、お父さんの命日だったよね」


「ええ。来週の土曜日にまた来ます」


今度は時間給を貰わなくてもいいからゆっくり参れると思って微笑んだ。



「……あの、愛花さん」


水撒き用のバケツを手にする私に、真壁さんは遠慮がちな声をかけてくる。
はい…と顔を上げて振り返ると、ふわっと仏様の様な笑みを浮かべて。


「土曜日のお参りが済んでからでいいんですけど」


躊躇いがちに切り出され、ぎくっと心臓が跳ね上がる。


「どうかしましたか?」


ドキドキと焦る気持ちを顔に出さないようにして訊ね返すと、真壁さんは私とは正反対な感じで喋りだした。


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