珈琲プリンスと苦い恋の始まり
彼女はそう言うと、俺に顔を上げて欲しい…と願った。
自分もいつのまにか泣いていたみたいで、ぐすっと鼻を鳴らしている。


「そんなに謝られても仕様がないよ。もう桜は無くなってしまったんだから」


諦めるように呟き、涙ぐむ目線を外へと向ける。


その横顔が寂しそうに見える。

この家に桜があった頃、彼女はこんな表情をしてなかったと思うのに__。




「あの桜はね…」


か細い声で語りだした話。
それはきっと、彼女しか解り得ない哀しみだろう___。


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