珈琲プリンスと苦い恋の始まり
それはまるで、これまで語ることを我慢していた様な感じで、壊れかけたラジカセか何かのように、一生懸命に声を出し続けて話した。


彼女は肉親の死を重ねて見て、自分もいつか同じ様な死に方をするんだろうなと思う…と言った。


「だから、あまり人とは関わりたくないの。
深く関わって、急に亡くなってしまったら、その人が私みたいにショックを感じたらいけないでしょ。

あんなショックを受けるのは私一人だけでいいと思う。
他の誰にも、あんな思いを味わって欲しくない」


それくらい衝撃が強かった…と語り、ポロン…と涙を零した。


「人間ってね、本当に一寸先は闇なんだと思うよ。
私、父と祖母が亡くなってるのを目にした時、余りにも呆気なさ過ぎて声も出なくて。

子供だったから怖くもあって、綺麗に整えられた後でも、二人の側へは行き難かった。


亡くなった、と認めたくなかった。

もう二度と笑いかけて貰えないんだ、と考えたくもなかったの。

幸せが手の届かない場所に行ってしまった…と、きっと、思いたくなかったんだと思う……」


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