珈琲プリンスと苦い恋の始まり
心許せる人
(どうして私、あの人にあんな話をしてしまったんだろう……)
職場まで送り届けてもらった後、私は彼が運転する車体の背中を見送りつつそう思った。
あの家で、亡くなった父が付けてくれた名前の理由を紐解かれ、桜のことについて謝られて、何だか分からないけど落ち込んだ。
彼の言った言葉が、悲しいけどその通りだと思った。
あの庭にあった桜は私達家族にとって、本当に大事な宝物のような存在だった。
あれが咲く頃に生まれた自分が誇らしく感じられていた。
家族が亡くなっても、あの桜が残ってるから大丈夫だと思えた。
なのに、花を見に行っても今年は桜の木が無くて、目の錯覚なのかと思って、何度も目を擦って見直した。
見返しても見返しても、桜の花が見つからない。
何処へやったの!?と叫び出しそうになって、パニックのまま家の中に走り込んだ。
あんな大木を根こそぎ何処へやった!?と怒鳴って。
だけど、目の前の彼は驚くだけで、この人に言っても駄目だ…と感じた。
そもそもあの家を売ったと母に聞かされた時から、自分の帰る場所ではなくなっていた。
職場まで送り届けてもらった後、私は彼が運転する車体の背中を見送りつつそう思った。
あの家で、亡くなった父が付けてくれた名前の理由を紐解かれ、桜のことについて謝られて、何だか分からないけど落ち込んだ。
彼の言った言葉が、悲しいけどその通りだと思った。
あの庭にあった桜は私達家族にとって、本当に大事な宝物のような存在だった。
あれが咲く頃に生まれた自分が誇らしく感じられていた。
家族が亡くなっても、あの桜が残ってるから大丈夫だと思えた。
なのに、花を見に行っても今年は桜の木が無くて、目の錯覚なのかと思って、何度も目を擦って見直した。
見返しても見返しても、桜の花が見つからない。
何処へやったの!?と叫び出しそうになって、パニックのまま家の中に走り込んだ。
あんな大木を根こそぎ何処へやった!?と怒鳴って。
だけど、目の前の彼は驚くだけで、この人に言っても駄目だ…と感じた。
そもそもあの家を売ったと母に聞かされた時から、自分の帰る場所ではなくなっていた。