珈琲プリンスと苦い恋の始まり
彼が店でしてくれた行為は、全て傷付いてる私への救済行動だった。

過去の話を聞いてくれて、慰めるように肩を抱いてくれた。それから、頬に触れてキスをして__………



「…愛花?」


顔を覗き込もうとしてる梨華に驚き、「お風呂場へ行かなきゃ」と走り出す。

見送る格好になった梨華はキョトンとしていて、それを背中で感じながら胸が鳴りだした。


私はやはりどうかしてた。
あの人に縋って、全てを話してしまうなんて。

祖母が亡くなってからこっち、入院中のカウンセラー以外には見せてこなかった心を許してしまうなんて馬鹿なことをした。

もう二度と気持ちを緩ませないでおこう。彼に迎えに来て貰っても、同じことはしないようにしないと__。


改めてそう思って業務に就いた。
利用者さん達は鋭くて、何人かに「泣いたの?」と訊かれながら誤魔化しては働いた。


就業時間を大分過ぎてから彼に迎えに来てもらった。
そうしないと誰に見られてるか分からないと思ったからだ。



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