珈琲プリンスと苦い恋の始まり
「らっしゃい!」


威勢のいい声を発したのは大将だ。
私はその声を聞いてギクッとし、顔を伏せたままで彼の後を追った。


「あれ?」


大将がそう言うのが聞こえ、ビクン!と更に背中を伸ばす。
ちらっと目線を向けるとバッチリこっちを見ていて、マズい…と思ったけど時は遅くて。


「愛花ちゃんじゃないか」


にこっと微笑まれてしまう。
こうなるともう無視したりすることは出来なくて、仕様がなしに「今晩は」と挨拶した。


「えっ?何?知り合い?」


振り向く彼に、ええまあ…と声を潜める。
大将は私と彼を交互に見比べて、「彼氏?」とニヤつきながら訊いてきた。


「いいえ、違います!仕事関係の知り合い!」


速攻で否定。
彼は唖然とした顔になり、大将はハハハ…と声を出して笑った。


「そうか、まあいい。どうぞ」


自分の前に座るように…と促し、私としてはなるべく隅の方の席に行きたいと思ったんだけど。


「では、遠慮なく」


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