珈琲プリンスと苦い恋の始まり
初めて来店したにも関わらず、彼は招かれるままにカウンターの中央へ座った。
おかげで私もなし崩しのように隣に腰掛けることになり、そこに熱いお茶とお絞りが届けられた。
「アルコールは?」
女将さんに訊かれ、彼は「運転するので」と断った。
私にも目線を流されてきたから「同じです」と言った。
「かなり久し振りだね。昇平は元気かい?」
お任せで握って下さい、と言う彼の注文通り、大将は鮨飯を握りながら訊いてくる。
私はお絞りで手を拭くのを止め、「はい」と細い声を返した。
「和恵さんは?」
「元気です」
両親の名前を出され、やっぱり来るんじゃなかった…と後悔しだす。
この店の大将は昇平さんとは同級生で、それで二人が結婚したのも知ってるんだ。
実は、去年の母の誕生日祝いをこのお店でした。
二人は誕生日のお祝いを三人でしようと勝手に決めていて、毎年それに私を巻き込んでる。
巻き込まれる私としては迷惑なだけで、淡白な親子関係でいたいと望む身には、苦痛以外の何ものでもないのに。
おかげで私もなし崩しのように隣に腰掛けることになり、そこに熱いお茶とお絞りが届けられた。
「アルコールは?」
女将さんに訊かれ、彼は「運転するので」と断った。
私にも目線を流されてきたから「同じです」と言った。
「かなり久し振りだね。昇平は元気かい?」
お任せで握って下さい、と言う彼の注文通り、大将は鮨飯を握りながら訊いてくる。
私はお絞りで手を拭くのを止め、「はい」と細い声を返した。
「和恵さんは?」
「元気です」
両親の名前を出され、やっぱり来るんじゃなかった…と後悔しだす。
この店の大将は昇平さんとは同級生で、それで二人が結婚したのも知ってるんだ。
実は、去年の母の誕生日祝いをこのお店でした。
二人は誕生日のお祝いを三人でしようと勝手に決めていて、毎年それに私を巻き込んでる。
巻き込まれる私としては迷惑なだけで、淡白な親子関係でいたいと望む身には、苦痛以外の何ものでもないのに。