珈琲プリンスと苦い恋の始まり
俺に気づいた彼女は、パッと顔を上げると目を逸らせる。一瞬昼間のことが頭を掠め、自分も誤魔化すように咳を払った。


「さっきの電話、お母さんからだったんだろ。何て?」


訊くと眉間に皺を寄せ、『何処にいるの?』と問われた…と言う。


「どう答えたんだ?」


俺の言葉に目を向けてきて、不機嫌そうに喋った。


「嘘言っても仕方ないから、仕事の関係者と夕食を食べてると言ったよ。そしたら、『早く言ってくればいいのに』と呟かれて、面倒くさいから『ごめん』って謝っておいた」


過保護なの、と言う彼女は、はぁ…と深い溜息を吐き出す。

俺にはそんな彼女が親に心を開いてないというよりも、クールにやり過ごしたいだけの様な心境が窺えて、やはり彼女の両親は、何かを勘違いをしているんじゃないのか…と感じた。


「ねぇ、あの…愛花さん」


「ちょっと!」


「は?」


急に目線を上げ、俺を見返した彼女は……


「その呼び方は何!?どうしていきなり名前で呼ぶの!?」


ほんのりと頬を染めてる。
俺はその表情が可愛く見えて、「何となく」とニヤつきながら答えた。


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