珈琲プリンスと苦い恋の始まり
「私の名前は『人に愛されるように…』と言って付けられたけど、私自身としてはもう愛なんていらないの。

愛なら亡くなった人達に貰ったし、それがあるお陰で辛うじて生きてられる。

だから、誰ともアッサリした付き合いだけをしておければいい。情なんて残すつもりもないし、私が生きてた記憶とかも残らなくてもいいと思ってる。

皆がさっさと私を忘れて、自分の人生を楽しめばいい。そうしてくれることが何よりの願い……」


親もそう…と呟くと、彼は眉間に皺を寄せた。

その表情は無理だろ…という顔つきに見え、私はスン…と鼻水を吸う。


「お願いだから、これ以上私に関わろうとするのはやめて。私には触れ合いもいらないし、一人でいる方が気が楽だから」


温もりを知れば無くしたくなくなる。
知れば知るだけ切なくなって、辛くて苦しい思いをするだけ。


「それで君は寂しくないのか?涙を受け止める相手もいなくて、一人だけで泣き続けるのがいいのか?」


「だって!所詮人は独りなのよ!?生まれてくる時も亡くなる時も、たった独りだけなの。
誰かと同時になんて生まれてこないし、死ね時だって同時には死ねない。

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