珈琲プリンスと苦い恋の始まり
だったら、生きてる間も独りでいても平気。関わりが少ない方が、いつ迎えが来ても後悔がない」


「馬鹿を言うな!」


急に怒鳴られてビクッとした。
泣いた眼差しのまま彼を見ると、興奮気味に顔を赤くしてる。


「関わりがない方が後悔がないなんてあるか!
例えば袖が触れ合う程度の縁でも、覚えてる相手なら亡くなれば悲しいし、やっぱり少なからず思い悔やむことはあるよ!

君は亡くなれば全てが終わるとでも思ってるのかもしれないけど、残された方はそこから色々と始まるんだ!

現に君は、お祖母さんが亡くなってからフォトライターを始めたんだろ。

その写真を遺して逝った後で、それを見た人達に自分が見てきたことを伝えたいと思ってるんじゃないのか!?

それを見て誰かが勇気を貰うかもしれない。
俺みたいに君に興味を持って、どんな人だったろうかと調べる人間もいるかもしれない。

そう思うと、死は終わりなんかじゃないんだ。
誰かにとっては、新しい門出にもなり得るんだよ!」


一気に捲し立てた後は、急に声を細めて「ごめん…」と言った。
シートベルトを緩めると私の方に近寄り、肩に手を置いて願った。


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