珈琲プリンスと苦い恋の始まり
「俺の方こそ頼む。そんな風に死ぬことばかりを考えるな。

急にやめろと言っても無理だろうとは思う。でも、もっと生きてるうちに、ドンドン人と深く関わって、自分が大切だと思えることを増やしていって欲しい」


自分が君の亡くなった肉親ならそう思うと言い、優しく微笑みながら涙の雫を指で掬った。


「……俺、愛花さんのことを好きだと思う。
最初は変わった写真を撮る面白い子だな程度にしか思ってなかったけど、君のことを知る度に、どんどん君に惹かれていって、今はもっと、君に近付きたいと考えてるよ……」


君には迷惑かな…と笑い、そっと唇を頬に寄せた。
驚いた私は慌てて彼から離れ、プイとそっぽを向いてしまう。

自分の人生の中では、これ程懸命に言い寄ってきた人がいない。だから、どう対応していいかが分からず困った。


彼は小さく笑うとシートベルトを締め直し、「走るよ」と言ってアクセルを踏む。


細かく揺れる車内ではカーステレオから流れるナビの音声だけが聞こえ、その機械的な音声を耳にしながら、胸の奥が大きく震えてくるのを感じた__。


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