珈琲プリンスと苦い恋の始まり
「また明日な」


迎えに来る約束をして走り去る彼の車を見送る。
私が断っても彼は迎えに来ると言い張り、結局仕様がなくて、お願いします…と折れることになった。


家の門をくぐると外灯が点いてるのを確認した。
私が写真の撮影で遅くなる時も、いつもこうやってちゃんと外灯は点けてある。

多分、母が点けてるんだろうとは思う。
私のことを心配して、帰ってきて欲しいと願ってるんだとは思うけど__。


彼が言った言葉を胸にしたまま、「ただいま」とドアを開けた。
母はリビングから飛び出してきて、「おかえり」と声をかける。

その顔を見てると胸が切なくなる。
母が昇平さんと再婚して、新しい人生を歩んでることを羨ましくも感じる。


「……今夜はごめん」


私にしては珍しく、きちんと顔を見て謝った。
母は驚いたように目を見開き、キョトンとした顔つきでいる。


「次からは早目に言うから」


次の約束もしたことがないのに口にして、急いで階段を駆け上がった。

自分の中でなにかが変化した様な気分がして、彼の所為だと感じた。


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