珈琲プリンスと苦い恋の始まり
「また余計なことを言ったな…」


見送られる車内で独り言を呟いた。
バッグミラーに映る彼女は不機嫌そうな表情でいて、怒鳴らなければ良かった…と思った。


「女性に対して馬鹿は言い過ぎだよな」


絶対に嫌われたな…と反省する。
おかげで明日も迎えに来なくていいと断られたが、そこで引き退ったら更に溝が深くなる様な気がして、必ず行くと押し通した。


「もう普通に話しても貰えないかもな」


失望を感じて「あーあ」と声を発する。
泣いてる彼女をただ慰めるつもりが思わず気持ちが溢れてしまい、簡単に「好きだ」と言ってしまった。


「あんな状況で言ったって、深くは受け止めて貰えないよな」


しまった…とボヤきながら店に戻り、今夜は此処に泊まろうかと思ってた時だ。


スマホの着信音が聞こえて電話に出た。
相手は親父で、いきなりこんな話を始めた。



「来月から別の店に行って貰う」


「おいっ!」


いきなり何を…と慌てた。


「其処には別の社員を送る。経営の仕方や残務整理をして待っておけよ。次の店の情報もそのうち送るから」


「父さん!」



< 189 / 279 >

この作品をシェア

pagetop