珈琲プリンスと苦い恋の始まり
(それに、俺はこの店で他にもしたいことがあるんだ…)


壁を見つめながらある考えが出来上がっていた。
その為にもこの場所から離れる訳にはいかない。


(反抗したらどうなるのかな)


これまでしたことがないから何かと迷う。
けれど父に反発しないと、俺はいつまで経っても奴の思うままだ。


(もういいだろ。いい加減)


十分動いてやった。
今回くらい我を通しても不義理には当たらないだろうと思う。


(兄貴にも協力を頼むか…)


何と言っても次期社長だしな…と囁き、決めたその場でナンバーをタップした。

電話に出た兄貴は俺の話を神妙に受け止め、「思うようにやってみろよ」と勧めた。


『俺はお前の様に自由には動けない。だから、お前がやることを羨望の眼差しで見守るよ』


親父にも口添えはしてやる、と約束をする。兄貴には「悪いな」と謝り、「ありがとう」とお礼を言った。


『お礼を言われるなんて初めてだな。何だか薄ら寒くて怖いもんがあるよ』


笑いながら兄貴は電話を切った。
後は強力な援護を受けて、親父がどう出てくるかを観るだけだが。



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