珈琲プリンスと苦い恋の始まり
「負けねぇぞ」


思えばどんな土地への出向も同じ気持ちで挑んだ。

此処へも当然そんな気持ちで来たし、これから先も自分が望む未来を作っていこうと思う時はずっと、同じ気持ちで挑むんだろうと思う。


へこたれてなんかいられない。

俺は自分の出来る限りの力を尽くして、自分だけでなく彼女のことも変えていきたいと思い始めてるんだ。


「そう言うと、また迷惑だと言い返されるんだろうな」


拒否もされるだろう。
放っといて、と怒られてしまうかもしれない。


(それでも、放ってなんかおけないんだよ…)


しみじみ自分を馬鹿だ…と感じる。
けれどその思いを、この家の魂がひっそりと受け止めてる様にも思えた。


(俺はこの家の中で、彼女が笑う顔が見たいんだ…)


悲しい場所のままにしておきたくない。
多分祖母と一緒に住んでた時みたいに、笑っていられる場所であって欲しい。


(そうすることが、きっとあの桜を伐採した慰めにも繋がる)


決して同情ではなく、純粋に彼女の幸せを願った。

不幸ばかりが続くんじゃない、と彼女に教えてやりたいと思った___。



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