珈琲プリンスと苦い恋の始まり
自分も助手席側のドアを開ける。
カチンとシートベルトのロックを締め、とっとと出て欲しいと願った。


「本当にいい迷惑」


呟いても彼は全く動じない。
自分はもっと二人にきちんと挨拶をしたかった…と言いだし、私は更に激怒した。


「いいの!そんなことしなくても!」


どうにもこの人にはペースを乱されてばかりいる。
私はまた厄介事が増えたような気持ちがして、大きく息を吐いて額に手を当てた。


「…ごめん」


謝る彼に目線を流した。
彼は真っ直ぐと前を向いていて、その横顔を確認する。


「昨夜は悪かった。君に無理難題を押し付けた…と反省してる」


「あのね…」


今謝るポイントはそこじゃないでしょ、と言いたくなり、肩を落として彼を見遣る。

だけど運転してる人にとやかく言うのも悪いかな…と諦め、「もういいよ」と受け流した。


「貴方が言ってたことは謝る様なことじゃないと思う。確かに私は人との関わりを避けてるし、後ろ向きに生きてるのも本当だと思うから」


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