珈琲プリンスと苦い恋の始まり
二人で東の空を見上げた。
残念ながら虹は見えず、グレーの雲がまだ立ち込めてるままだった。


「出てないよ。仕様がないからこのまま海まで歩こうかな」


真っ直ぐ畦道を突っ切ると海岸に出られる。

祖母と一緒に住んでる頃は二人で浜辺まで行って、岸に打ち上げられたワカメや海藻を拾って帰ったりもしたのを思い出した。


「俺も一緒に行っていい?また色々と教えてくれよ」


「貴方にはお店があるでしょ。お客さんが来たらどうするの?」


「そんなの君を追おうと決めた時点で閉めたよ。開け放して来るほど不用心じゃないよ」


だから大丈夫と言うもんだから嫌になる。

彼は私の背中を押して「行こう」と勧め、私はやれやれ…と息を吐いて此処へ来た。



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