珈琲プリンスと苦い恋の始まり
声をかけられ振り向くと、彼は自分も撮って欲しいと言いだした。


「君の写真はいつも人以外のものばかりだろう。偶には俺の横顔でも撮ってみれば?」


ほら、と言って横を向く。
スッと伸びた鼻筋が綺麗で、皆がイケメンだと言うのも納得がいくと思った。


でも__。


「生憎だけど私は人を撮らない主義なの。その理由は前にも話したでしょ」


「俺は君のカメラの前で格好付けたりしないよ」


「それでも撮りたくない。このカメラで人を撮ることはしたくないの」


頑なに拒否すると溜息を吐かれる。

それでも「仕様がないな」と諦められた後はホッとして、逆に一枚くらいなら撮ってあげても良かったのかな…と考えさせられた。


(確かに被写体としては映えそうだから)


そう思ってポリシーは曲げないと強がる。

私の周りで動き回ってる彼を見ると賑やかしい人だと思い、撮りたくなくても、そのうちファインダーの中に入ってきそうだと感じた。



(もしも勝手に映り込んだらどうしよう)


その写真を削除するのもどうかある。
その時はまあ仕様がないか…と思い、海の上や空を飛び交うトビの姿を撮り続けた。


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