珈琲プリンスと苦い恋の始まり
「そうですよね。じゃあどうしましょう」


何かいい店名はないものか、とその場で知恵を出し合うことになった。

俺も自分の店だからいいネーミングはないかと思うが、父と違ってロマンチストでもないから、なかなか簡単には思い浮かばない。



「…あっ、そうだ」


もう一人の事務職の女性が声を上げ、彼女を呼んできましょう…と立ち上がる。

藤枝さんを始めとする事務所の社員達は「そうだね」と一様に納得して、俺は一体誰を呼んでくるつもりなのかと窺った。


五分程度の時間が経過した後、コンコンと会議室のドアがノックされて開く。

「お待たせしました」と先に事務社員が中に入り、その後ろを付いてくる人の顔を見て驚いた。


(あっ…)


声に出さずに目を見開く。
いつか着ていたブルーのTシャツを身に付けた女性は、ぺこんと頭を下げて入室した。



「待ってたよ。江崎さん」


まあ座って…と椅子を勧められ、彼女は大谷さんの近くに腰掛ける。

彼女がくると皆はホッとした様な表情に変わり、この女性に何をそんなに期待しているのだろうか…と思った。


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