珈琲プリンスと苦い恋の始まり
「じゃあ俺が一月だけ出向いて、もう一人新店を任すことの出来る人間を育ててやる。
けど、その後は好きにさせろ。俺が行くと言う店に行かせて、暫くそこに根付かせて欲しい」


やりたい事が見つかったんだ、と言うと渋い顔つきに変わる。女でも出来たのか?と問われ、それには肩を竦めた。


「想像に任せるよ。それよりも早く新店に向かう奴を選んで、さっさと俺を返してくれ」


このまま会議を続けても埒があかない。

俺はまだ彼女に自分の立場も明かさずにいて、そのままこの会議へと出席することになってしまったんだ。


(事の次第を説明するのが厄介だな。電話では理解して貰えそうにもないし、話すならやはり、彼女の顔を見てからにしたい)


そんな風に思ってしまったのが間違いだった。

会議を終えて彼女に電話をしたが、お電話には出られません…とメッセージが流れた。




(何があった?)


不安を覚えながらスマホを見つめる。
茫然と佇む俺の隣に兄が来て、「彼女に連絡がつかないのか?」と訊ねた。

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