珈琲プリンスと苦い恋の始まり
実は、この会議の前に、兄貴には全てを言った。
好きな女性を見守りたいから、どうか俺を援護して欲しいと願った。


「電話が繋がらない」


情けない声を出すと、笑いながら「嫌われる様なことでもしたんだろう」と言う。


「冗談じゃないよ。俺はまだキスしか相手にはしてない」


しかもたった一度だけ。
それを彼女は、俺が弾みでしたと勘違いしている。


「だったら何故だ。お前以外に好きな相手でも出来たのか?」


兄貴は、まあ今は気にしないで仕事に励めと勧める。
俺がさっさと新店を任せる人材を育ててしまえば、後は自由を与えて貰えるんだ…と諭した。


「お前の女は、それも堪えれないような相手なのか?」


問う言葉に悩み、そうではないけど…と言いたくなった。


「……でも、事情があって複雑なんだ」


話せば長くなると思って言わなかった。

胸の奥底に広がる不安を感じたまま、新しい店へと出向いていくことになってしまった__。



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