珈琲プリンスと苦い恋の始まり
それと同時に彼女と一緒に、この星空を見たいとも思った。
高原の朝霧の中を散歩して、彼女とキスをしたい…と願った……。


(彼女は俺のそんな気持ちを知らない。こんなにも一人の女性を好いて、恋焦がれたのだって初めてなんだからな)


もっと彼女への気持ちを何度も言葉に出して伝えれば良かった。
呆れられてもめげずに伝えて、いつかは私も…という言葉を引き出してみたかった。


(それももう直ぐ出来る。もう少しで彼女に会えて、あの小さくて華奢な体を抱いてやれる)


何も知らないというのは愚かだ。

俺の知らないところで、彼女の周りが変わろうとしてることに、まだ何も気づいていなかったんだから。


俺はただ、彼女の元へと帰り、前のように彼女と会えると信じていた。

それを疑わずに新店での業務を終え、その日の夜、最終便の飛行機に乗り込み、懐かしい海辺の店へと出戻っていった___。


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