珈琲プリンスと苦い恋の始まり
そこには丸椅子やナイトテーブルなんかが貼られ、名刺以外にも鉛筆のようなシャーペン軸まで作ってあった。


「大きな木だったから、まだまだ何かが作れそうでワクワクしています」


バンダナを頭に巻いた彼女はニコッと笑いながらそう言う。


「……あの、俺の注文も受けて貰えそうですか?…実は、この木は俺の好きな人が以前住んでた家の庭にあったものなんです。

彼女の名前もこの木から付けられたそうで、彼女や彼女の家族にとっては、大事な宝物みたいな存在だったと思うんです」


俺は菰田さんに切ることになった経緯を説明し、あの木が再生して生まれ変わった品物を彼女に贈りたいんだ…と話した。


「素敵な考えですね。私がその人なら絶対に嬉しい筈です」


注文が来ているもの以外は、全て俺の注文に使いましょう、と言ってくれ、「何を作ったらいいですか?」と問い合わせてきた。


俺は此処に来るまでの間、ずっと思っていた物の話をした。 

彼女は手を叩いて「素敵!」と歓び、「他にも何点か別の物を考えましょう」と言ってくれた。


夕方近くまで話し込んでいた所為で、店に帰るのが翌日になってしまったんだ。


< 235 / 279 >

この作品をシェア

pagetop