珈琲プリンスと苦い恋の始まり
山の麓にある寺とは言え、まだ辺りは明るい。
俺はさっきの会話からして、彼女が庭の方へと回ったんだろうと考え、自分もそっちへ向けて足を運んだ。
植え込みの側を通り抜け、庭に差し掛かった辺りで声がする。それが男女の話し声だと分かり、思わず心臓が跳ね上がった。
「真壁さん…どうして此処に?」
「愛花さんこそ何故」
互いの名前を呼び合い、偶然ここで会ったように驚いている。
「私は空蝉を写しに来たんです。毎年ここの松の木に、沢山のサナギが集まるのを見てるから」
羽を広げる瞬間を撮りに来たと言うと、相手は「そうですか」と落ち着いた声で返した。
「自分の方は、今夜、此処で通夜がありまして」
ご院家が別の葬式で不在の為、親戚にあたる自分が借り出されましたと説明をした。
「そうなんですね」
彼女が声を返すと、二人はそのまま沈黙する。
俺はその雰囲気にただならぬものを感じ、もっと近寄ってみようと足を踏み込んだ。
俺はさっきの会話からして、彼女が庭の方へと回ったんだろうと考え、自分もそっちへ向けて足を運んだ。
植え込みの側を通り抜け、庭に差し掛かった辺りで声がする。それが男女の話し声だと分かり、思わず心臓が跳ね上がった。
「真壁さん…どうして此処に?」
「愛花さんこそ何故」
互いの名前を呼び合い、偶然ここで会ったように驚いている。
「私は空蝉を写しに来たんです。毎年ここの松の木に、沢山のサナギが集まるのを見てるから」
羽を広げる瞬間を撮りに来たと言うと、相手は「そうですか」と落ち着いた声で返した。
「自分の方は、今夜、此処で通夜がありまして」
ご院家が別の葬式で不在の為、親戚にあたる自分が借り出されましたと説明をした。
「そうなんですね」
彼女が声を返すと、二人はそのまま沈黙する。
俺はその雰囲気にただならぬものを感じ、もっと近寄ってみようと足を踏み込んだ。