珈琲プリンスと苦い恋の始まり
「無くならないでっ!!」


願い事のように放った声は、お寺の庭中に響いた。


「何度も同じ目に遭うのは懲り懲りなの!!」


突然死を見つけるのももう嫌。

冷たく変色して、死後硬直が始まってる体に触れるのももう経験したくない。


前の日まで笑ってた顔が眠ったままでいるのも見たくない。

納棺師がどんなに綺麗に仕上げても、私は生きてる姿が見たかった___。



「私よりも先に逝かないで…!…誰ももう……目の前から居なくなったりしたらやだっ……!」


それをずっと誰にも言えずに苦しかった。


だって、人はいずれ死ぬし。
その死に方だって、場所だって、時間だって、誰にも決して決められないから。

生まれたからには、それは誰しにもある苦しみの一つで。
順番だって、一緒にだって出来ないことだと分かってるから。


だから、これまでは誰にも願わずに生きてきた。
言っても無理難題だと笑われるだけだと思うから、言わずにぐっと我慢した。

でも……。


「お願いだから、私よりも先に逝かないでっ!

一分でも一秒でもいいから長く生きて、最後の瞬間まで、私の側に居ると誓って……!」


力の限りを尽くして頼んだ。
彼は私の目を見たまま、じっと黙り込んでいた___。



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