珈琲プリンスと苦い恋の始まり
「……うん。誓うよ…」
俺は心の底からそう願って答えた。
寂しく生きてきた彼女に、希望を与えてやりたかった。
それは最初から同情ではなかった。
あの初対面の日に見た彼女の熱気に、最初から包まれてたんだと思う。
「もう泣くなよ」
そう言いながらも、自分はまだ泣いていた。
泣きながら何度も彼女の体を抱き締め直して、自分の熱で彼女の中にある恐怖心を溶かしてやろうと考えた。
「白川さん…」
懐の中から苗字を呼ぶ声がする。
俺はそれに反応するように腕の力を緩め、見上げる彼女の顔を見つめた。
彼女は、泣いてても可愛かった。
睫毛がしっとりと濡れていて、黒目が潤んで綺麗だった。
「俺の名前は『武斗』って言うんだ」
彼女に名前で呼んで欲しいと思って告げた。
微笑んだ彼女は目尻からまた雫を流し、囁くようなか細い声で呼んだ。
「武斗……さん…」
その声が照れくさそうに聞こえる。
俺は反射的に彼女の頬に擦り寄り、そのまま唇にキスを落とした。