珈琲プリンスと苦い恋の始まり
昇平さんは愚痴っぽい言葉を続け、それでも将春から電話があった時は、良いように傾向が変わり始めたのかな、と思ったと言った。


「金持ちのイケメンと二人で寿司を食べに来たと聞いてね。まなちゃんにもそんな相手が出来たんだ…と安心した。

誰にも興味を持たないまま生きていくのか…と心配してたんだ。

排他的に生きて、いずれ迎え来る死を待つだけの人生を送るんじゃないのかと不安だった…。

僕は本当に、君と出会って良かったと思っている。

あの古い家に君がやって来たのも、実父が何処かで縁を結ばせたんじゃないかと思うくらい、偶然を感じてるんだ。

……だって、君の雰囲気は彼によく似ているから。
常に前向きで好奇心が旺盛そうで、目がきらきらと輝いている。

物腰も柔らかくて優しい。
思慮深さと情も、兼ね備えている……」


ベタベタに褒められて、流石に「やめて下さい」と断った。
昇平さんは笑いながら「済まない」と謝り、とにかく嬉しいんだ…と呟いて酒を飲んだ。


「僕はどうかお願いがあるんだ。
まだ初めて会ったばかりの君に、願うことではないと思うんだけど…」


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