珈琲プリンスと苦い恋の始まり
「うん、いいな」


壁に飾り終えた写真を見つめ、彼が満足気に頷く。
私は彼の側で微笑み、凭れるようにして彼の腕に縋った。


武斗さんとの付き合いも半年が過ぎた。
優しい彼の温かさと愛に満たされて、私の毎日はとても幸せだ。

出来ればこの日々がずっと続いて欲しいくらいに思ってる。急に終わることなく、出来るだけ長く……。




「今日は愛花に大事な話があるんだ」


カウンター内に戻り、珈琲を淹れ始めた彼が言う。
私はその言葉に胸を弾ませ、何?と返しながら鼓動が増すのを聞いた。

彼はちらっと目線を走らせると少し困った様な表情に変わり、私は何となくだけど嫌な予感がして、「悪いこと?」と訊ね返した。


「うん……悪いって言うか、残念な知らせ」


彼は淹れたての珈琲をカップに注いで私の前に置く。
いつもなら直ぐにカップを持ち上げて飲み出すけど、今日ばかりは手も付けれない。


「悪い知らせって何?」


誰かが亡くなった、とかいうのだと嫌だと思いつつ緊張してくる。
武斗さんは布フィルターに残った珈琲の粉を流しのゴミ受けに捨て、うん…と重い声を発して溜息を吐いた。



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