珈琲プリンスと苦い恋の始まり
「それは嫌だな。愛花の涙を拭う役目も、笑わせるのも俺がいいんだけど」


顔を寄せてきながら彼が続ける。
親指の腹で目尻から唇に触れ、そのまま掌で頬を覆った。


「……俺の願いを聞いてくれないか?」


真剣な眼差しになる彼を見つめたままでいた。
頭を横にも縦にも触れなくて見つめ返してると__


「俺は愛花と離れたくないんだ。出来ればずっと一緒にいてやりたいと思うけど、それはもう此処では難しいと思う。…だから、愛花には思いきって欲しいことがあるんだけど……」


少し怖い表情に変わる。
そんな彼の口から出た言葉は___


「この土地を置いて、俺について来て欲しい。
俺の行く場所に一緒に行って、側で生きていって欲しいんだ。

それでも、いつ死に見舞われるかは知れないし、それは今日かも知れないし、明日かも知れない。運が良ければずっと先まで生き続けて、皆に見守られて逝けるかも知れない。

……だけど、どんな死に方をするとしても、目を閉じるその瞬間までは愛花が俺の側に居て。
離れ離れになったままで死を迎えるなんてこと、俺にはとても耐えれないよ。

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