珈琲プリンスと苦い恋の始まり
それに、何より腹が立つ。俺がこの町から去った後で、愛花に触れる奴が他にも現れるかもしれないと思ったら、嫉妬でどうにかなってしまいそうだ。

…だから、俺について来て欲しい。お墓と家はこれからもずっと大事にしていくと誓うから、俺の目の届く範囲で生きてて欲しい!」


ぎゅっと手を握られた。
彼の大きな手に包まれて、自分の手が温かくなってく。

頭の隅っこで、彼に初めて抱かれた日のことが思い出された。
恥ずかしくて同時に怖くもある気持ちを、同じ様に彼が包み込んでくれた。


「大事にする…」と優しい声で囁いてくれて、最後までぎゅっと手を握っててくれた。


あの時、此処で生き絶えるのは嫌だと思った。
折角生きるのなら、明日を信じて生きたい…と感じた。


その思いは今も一緒だ。
この人の側で生きて、明日が来ることを信じて生き続けてたい。

この手を離したくないし、離されたくもない。
例えばまた、同じ様に冷えた手を握る日が来たとしても、その瞬間まではこの温もりを感じていたい。

動いてる心臓の音を確かめて、その時、この世に彼が居たことを覚えてたい___。


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