珈琲プリンスと苦い恋の始まり
「……いいの?」


私でいいかな。
何も持たないし、田舎者だけど。


「私でいいの?武斗さんが迷惑を感じて困ったりしない?
私は庶民で田舎者だよ?こんな私を連れて帰って、お父さん達をガッカリさせたりしない?
貴方に恥をかかせたり、笑われたりしない?…後悔させて、私にしなければ良かったなんて思ったりしない?」


身を乗り出して訊きだす。
彼の負担や重荷になるのだけは嫌だ__。


目を見合わせる彼の表情が綻んでくる。
くっきりとした二重瞼の目が細くなり、程よく肉が付いた唇の端が上がった。

それがゆっくりと動き出す。
その隙間から漏れだす声を、私は全身で受け止めようとした。


「しないよ。…もしも、俺が後悔をするとしたら、この町に愛花を置いて去る時だけだよ。未来よりも過去を選んだ愛花の気持ちを変えれなかったんだ、と悔やんで、ガッカリすることはあるだろう…と思う。

…だけど、今の言葉ならその後悔はしなくてもいいんだよな?俺と一緒に行く気があるからこそ、愛花は今みたいなことを訊くんだろ?」


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