珈琲プリンスと苦い恋の始まり
違う?と問う彼の手を握り返した。
コクンと力強く頷き、更に力を込めた。


「私も武斗さんを離れたくない。例えば冷たくなった手をまた握ることがあっても、その瞬間まで貴方と生きていきたい。

生きて明日を信じたい。未来を彩って、前向きでいたい!…だから、連れて行って!私と一緒に…生きて下さい!」


例えば、明日が分からなくても、今この瞬間、二人でいることを大切にしたい。

ずっと祈り続けていたい。
明日もまた、必ずこの人に会えるんだ…ってことを。



「愛花…」


ホッとしたような顔で武斗さんが笑う。
私はその顔に笑い返して、胸の中に頭を埋めた。

規則正しい心臓の音が聞こえる。
それが何よりの宝物だと思う……。



「あのさ」


頭の上で声がする。顔を上げると武斗さんが困ったような表情でいて、どうしたの?と訊き返した。


「実は、申し訳ないんだけど、マリッジリングをあげるのは少し先でいいか?ちょっと思うところがあって、依頼はしてるんだけど、まだ時間が掛かるみたいで」


「えっ!もう指輪の用意までしてあるの!?」


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