珈琲プリンスと苦い恋の始まり
自分の大事なものをバッサリと無くしてしまった会社の人の為に、どうして私が知恵を貸さなきゃならないんだ…と悔やんだ。



「…あっ、そうか」


揃っていた社員達は一応に納得したらしく、これくらいのことは自分達で思い付いてよ、と考える。

さすが…と褒められても嬉しくもなく、直ぐにその場を立ち去るように席を離れた。


スタッフルームに戻りながら玄関先に掛けられた写真を見遣る。
それは私が写したもので、写真の端に一言思い浮かんだ言葉を添えた。



『祖母』


項垂れる枝が年寄りのように見えたから付けた訳ではない。
祖母があの枝垂れ桜のように、惜しみない愛情を私に降り注いでくれたから付けたんだ。


私はその思いを大切にしたくてあの桜を写した。
そして、それはもうかなり前のこと……。



思い返しても虚しい…と肩を落として歩く。

あの写真が、私の生き方を少しずつ変えていく一枚になったんだ__。


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