珈琲プリンスと苦い恋の始まり
「フォトライター?…ですか…」
出張喫茶店をした翌日、山本さんはいつもの様に俺の店のカウンターにいた。
「そうだよ。絵はがきみたいに写真を撮ってはそれに言葉添えてるの」
もぐっとコンビニで買ってきたドーナツに齧り付く彼女を見つめたまま、「へぇ…」と気の抜ける様な声を発する。
話題の中心になっているのは、デイケアサービスセンター『悠々』で看護師として働く彼女のことだ。
正確には別の話題からそっちへ飛んだのだが、この際もうどっちでもいい。
「愛花ちゃんは看護師をしながら副業でフォトライターもしてるんだよ。『SAKURA』というネーミングで、休みの度にいろんな場所で写真を撮ってると聞いたことがあるよ」
「さくら…?」
スコーンの時と同様に、空になった袋を折り畳む山本さんに訊ねる。彼女はもう一度「そう」と言葉を繰り返し、きゅっと両端を摘んで結んだ。
(そうか…)
俺はその指先を眺めながら、あの雨の日に店に飛び込んで来たのが彼女だったんだと確信を深めていた。
それで何から質問をすればいいだろうかと思案して、あの桜の写真のことをもう一度訊ねようかとした。
出張喫茶店をした翌日、山本さんはいつもの様に俺の店のカウンターにいた。
「そうだよ。絵はがきみたいに写真を撮ってはそれに言葉添えてるの」
もぐっとコンビニで買ってきたドーナツに齧り付く彼女を見つめたまま、「へぇ…」と気の抜ける様な声を発する。
話題の中心になっているのは、デイケアサービスセンター『悠々』で看護師として働く彼女のことだ。
正確には別の話題からそっちへ飛んだのだが、この際もうどっちでもいい。
「愛花ちゃんは看護師をしながら副業でフォトライターもしてるんだよ。『SAKURA』というネーミングで、休みの度にいろんな場所で写真を撮ってると聞いたことがあるよ」
「さくら…?」
スコーンの時と同様に、空になった袋を折り畳む山本さんに訊ねる。彼女はもう一度「そう」と言葉を繰り返し、きゅっと両端を摘んで結んだ。
(そうか…)
俺はその指先を眺めながら、あの雨の日に店に飛び込んで来たのが彼女だったんだと確信を深めていた。
それで何から質問をすればいいだろうかと思案して、あの桜の写真のことをもう一度訊ねようかとした。