珈琲プリンスと苦い恋の始まり
しかし、田舎に出来た初な感じの珈琲店は珍しいらしく、地元の人間以外にも、通りがかりの観光客が結構寄ってくれる。
入ってきた客は誰もが珈琲とココアだけだと知って驚き、でしょうね…と俺も愛想笑いを浮かべた。
それ以外のメニューを増やす予定も今の所ない、と伝えると更に目を大きく丸くされるのだが。
開店して二、三日は何かと忙しく、休む暇もないくらいにお客さんが来てくれた。
けれど、今日は朝から雨降り。
客足もなく、俺はようやくのんびりと店番をしていた。
彼女が現れたのは、そんな日の昼前。
流石に退屈…と大欠伸をしていた時だ。
ガラッと雨除けのガラス戸を開ける音がして、俺は慌てて仰け反っていた上半身を起こした。
「いらっしゃいませ」と声をかける前に、彼女は俺に食いかかってきたんだ。
「ねえ、桜の木は何処にやったの!?」
カウンター越しに身を乗り出す女性は小柄で、踵を上げて叫んでいる。
「は?」
意味がわからない俺が眉を引き上げて声を発すると、キッと目尻を吊り上げてしまった。
「桜よ!桜!此処の庭にあったでしょ!!」
入ってきた客は誰もが珈琲とココアだけだと知って驚き、でしょうね…と俺も愛想笑いを浮かべた。
それ以外のメニューを増やす予定も今の所ない、と伝えると更に目を大きく丸くされるのだが。
開店して二、三日は何かと忙しく、休む暇もないくらいにお客さんが来てくれた。
けれど、今日は朝から雨降り。
客足もなく、俺はようやくのんびりと店番をしていた。
彼女が現れたのは、そんな日の昼前。
流石に退屈…と大欠伸をしていた時だ。
ガラッと雨除けのガラス戸を開ける音がして、俺は慌てて仰け反っていた上半身を起こした。
「いらっしゃいませ」と声をかける前に、彼女は俺に食いかかってきたんだ。
「ねえ、桜の木は何処にやったの!?」
カウンター越しに身を乗り出す女性は小柄で、踵を上げて叫んでいる。
「は?」
意味がわからない俺が眉を引き上げて声を発すると、キッと目尻を吊り上げてしまった。
「桜よ!桜!此処の庭にあったでしょ!!」