珈琲プリンスと苦い恋の始まり
「それは勘弁。俺はただ君が写真を撮るシーンを見たかっただけなんだ」


何せさっきは声をかける前に逃げ出されたからね…と肩を竦める。

そんなの当たり前に決まってるじゃない、と口にするのも嫌で、私は珈琲店のマスターをしてる人の顔をまじまじと見つめた。


彼は私よりも灯台の方に目線を向け直し、「やっぱり横か」と呟く。

そして、足を前に運びながら「一つ聞きたいことがあるんだけど」と前置きして近付いてくる。


こっちはそれに答える気もないからカメラのベルトを肩にぶら下げ直した。

知らん顔をして逃げようとするのに急ぎ足で側に寄って来て、「ねえ」と言って右の手首を掴んだ。


ギョッとして顔を睨み付ける私。
そんな私のことを上から見下ろしてくる彼は、「ちょっと待って」と声をかけた。



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