珈琲プリンスと苦い恋の始まり
背中に向かって声をかけると煩そうに振り返って見る。
その苦々しそうな彼女の顔を視界に収め、俺はもう一つの疑問を投げ掛けた。


「初対面の日に君が言った桜って何!?あの家と何か関係があるのか!?」


俺は若干体を前のめりにして訊いた。
彼女はその瞬間、ぎゅっと唇を結ぶ。

ほんの一瞬だけど、視線が泳ぐ。
それでも直ぐに俺のことを真っ直ぐ見つめて……


「貴方には関係ない!」


そう叫ぶと自分の車の中に乗り込む。
エンジンを掛けると乱暴に側を走り抜け、あっという間に灯台の方へ向かって行ってしまった。



「写真も横とか後ろ姿ばかりだけど、本人も同じだな」


呆れるように呟きをこぼしてしまう。
息を吐き出した俺の側で、海岸に打ち寄せる波だけが、静かに音を立てていた__。



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